以下のツールは、研究者が疾患の進行に関する本質を理解するために役立ちます。
細胞培養:疾患にかかわる異常細胞と正常細胞の両方を細胞培養で増殖させることで、細胞プロセスやタンパク質発現の違いに関する研究ができます。
異種間研究:ヒトで見つかった遺伝子やタンパク質は、他の動物種でも見つかる可能性があります。多くのヒト遺伝子の機能は、他の生物における類似遺伝子の研究によって明らかにされています。
バイオインフォマティクス:科学コミュニティは日々膨大な量の生物学的データを生み出しています。バイオインフォマティクスは、そのデータを整理し、正常細胞と疾患細胞の挙動をより明確に把握するのに役立ちます。
バイオマーカー:バイオマーカーとは、生物学的機能の測定、疾患経過の特定、または治療に対する反応の判定に使用できる物質で、多くの場合タンパク質です。バイオマーカーは診断、予後、治療の指針としても使用できます。
プロテオミクス:プロテオミクスは、特定の細胞や組織または生体内のタンパク質活性に関する研究分野です。タンパク質活性の変化は、対象疾患の経過や研究中の薬の作用を明らかにできます。
20人から80人の健康なボランティアの方を対象とした試験で、ときに患者さんを対象とする場合もあります。主な目的は、安全性と忍容性を評価し、薬が体内でどのようにふるまうか(薬が体内にとどまる時間、標的に達する薬の量など)を調べることです。
約100人から300人の患者さんを対象とした試験です。その目的は、薬の効果があるかどうかを評価すること、薬の安全性をさらに探索すること、および最適な用量を決定することです。
疾患および試験デザインに応じて、500人から5,000人以上の患者さんを対象とする大規模試験です。薬が健康被害を防ぐことができるかどうかを調べるには、非常に大規模な試験が必要になることがよくあります。その目的は、治験薬の有効性、安全性、忍容性を他の薬またはプラセボと比較することです。
第3相試験で明らかなベネフィットと許容可能なリスクが示された場合、企業は規制当局に治験薬の販売承認を申請することができます。日本では、医薬品医療機器総合機構が新薬を評価しています。また、米国や欧州連合(EU)では、それぞれ米国食品医薬品局及び欧州医薬品庁がその責任を管理しています。規制当局はすべての試験のデータを審査し、この薬のベネフィットがリスクを上回るかどうかを判断します。薬が承認されたとしても、規制当局は患者さんのリスクを減らすための計画を要求する可能性があります。患者さんにおける副作用を監視する計画も要求されます。
創薬の早期段階では、標的を追求するために低分子化合物を用いるか、高分子の生物学的製剤を用いるかが重要な決断となります。それぞれに長所と短所があります。
低分子は、細胞膜を通過して細胞内に入るように設計でき、細胞内の標的に使用できます。また、血液脳関門を通過して、精神疾患やその他の脳疾患を治療するものもあります。一方、生物学的製剤は通常は細胞膜を通過できず、脳に入ることもできません。大部分の生物学的製剤では、細胞表面に存在する標的や、細胞外を循環する標的に限定されます。
低分子は標的に対して良好な特異性を有することが多いのですが、治療用抗体は特異性が極めて高い傾向があります。高分子は体内に長く留まる場合が多く、その場合、投与頻度が少なくて済みます。