女性の働き方とエンパワーメントを考える
― アンコンシャスバイアスへの気づきが第一歩



日本のジェンダーギャップ指数は世界156か国中120位であり、特に経済や政治の分野で世界に後れをとっていることが指摘されています1。「育児休暇から復帰後、周囲からフルタイムで大丈夫?と何度も聞かれ、誰かに迷惑をかけているのか、子どもを放置していると思われているのか、と疑心暗鬼になりました。それは私自身のアンコンシャスバイアスだったと、今は気づいています」「子どもの具合が悪いときの保育園からの呼び出しには、ほぼすべて(母親である)私が対応しました」「育児休暇から復帰した(女性)部下に帰宅しやすいことを優先した担当を告げたら、もっとチャレンジがしたいという希望と合わず、かえって信頼関係を損なうところでした。優しさの勘違いで、事前にコミュニケーションをしっかり取るべきでした。」

2022年3月8日、国連が1975年に定めた「国際女性デー」に、アムジェン株式会社では、女性の働き方とエンパワーメントについて考える初めてのイベントを実施し、約300名のスタッフが参加しました。今年の国際女性デーのテーマは“ブレイク・ザ・バイアス(偏見を打ち破る)”。上記はイベントの中で社員から出たコメントです。

イベントを主催した社員ネットワーク・グループのWE2(Women Empowered to be Exceptional)メンバーと平原依文さん:WE2は、アムジェン社員ネットワークのひとつで、現在世界19か国、24チャプターがあり4,400名以上のメンバーが活動。日本では、ESG(環境・社会・ガバナンス)のDiversity, Inclusion & Belonging(DI&B、多様性・包摂性・一体感)の一環として結成。

マーケティング部で業務を行う傍らWE2チームのリーダーを務める二貝朋子さんは、「DI&Bの一環としてWE2では、ジェンダー・ダイバーシティ推進に対する理解を深める企画の実施、女性社員同士のネットワークの構築、アムジェンで活躍している女性社員のさまざまなストーリーの共有機会をつくっていきます」と説明。続いて、平原依文さん(WORLD ROAD株式会社共同代表、青年版ダボス会議One Young World日本代表)による『ダイバーシティ推進とアンコンシャスバイアス〜個の多様性が発揮されるチームづくり〜』と題した講演がスタート。平原さんは、「今日のゴールは、私たち誰もが持つ意識的・無意識的偏見に気づき、それを変えていこうと思うことです」と話しました。

平原さんは、多様な人種や性別、年齢の人々の顔や生活場面の写真やイラストを紹介しながら、参加者が直感的に何を思うかを問いました。その中の1枚が、それぞれがファストフードの袋を持った父親と母親とその子供のイラストで、「同じような風景でも、父親は楽しいお父さん、母親は怠けているお母さんのイメージをもたれやすい」と平原さん。

参加者から、同性間のアンコンシャスバイアスについて聞かれた平原さんは、「家事や育児の仕方、教育方針が家庭によって違うことを認識できていないことがバイアスを生じてしまう一因」とコメント。「お互いのやり方を話して共有できれば、もっと生きやすい社会になると思います。ジェンダー平等を目指して何か仕組みを導入しても、ジェンダー平等やアンコンシャスバイアスに対する理解がない限り変わらない。時間はかかるけれど、対話が必要なのです」と語りました。また、自分のバイアスに気づく方法として、話している相手の表情の変化に気づいたら、その瞬間を逃さず、その場で考えの違いを話題にし、相手の思いを聞くこと、と助言しました。

アムジェン株式会社の現状について議論するパネルディスカッションでは、女性社員数がまだまだ少ないこと、管理職あるいはラインマネージャーにおける女性比率の低さ、男性の育児休暇の取得率の低さについて率直な意見が交わされました。

ディスカッションの様子: 「アンコンシャスバイアスの存在を意識したい」「アンコンシャスバイアスを感じる場面に遭遇したとき、すぐに対処できるように知識を蓄えておきたい」「制約があっても、自分のやりたいことは大事にし、それを同僚や上司と共有できたらエンパワーメントにつながる」「勉強すればするほど自分のアンコンシャスバイアスに気づくが、社会全体の固定的概念を変えていくためには自分が不完全であっても何か伝えなきゃいけない。また、そこから対話が生まれて変えていく力になればいい」といった発言が続きました。

最後に平原さんからの「一人一人が持つ個性が社会を一歩前進させます。イベントが終わった後も、職場で皆さんの方からぜひ対話を始めてみてください」というエールがおくられました。

梶山美紀 執行役員人事部長は、アムジェンにおけるDI&Bについて、「様々に異なる状況を持つスタッフがその能力や可能性を遺憾なく発揮し、組織の成長に貢献できるよう環境を整えることは、ESG、DI&Bの重要なテーマです。アムジェンでは、2021年1月よりWorkplace Diversity(勤務地選択)制度の導入や、2022年4月の育児介護休業法改正施行に合わせて、必要とする育児、介護中のスタッフが気兼ねなく利用できるような制度となるよう諸規定の改定や、相談窓口の設置等を新たに実施しています」と語っています。

平原依文さん

WORLD ROAD株式会社 共同代表/HI合同会社 代表
青年版ダボス会議 One Young World 日本代表

小学2年生から単身で中国、カナダ、メキシコ、スペインに留学。東日本大震災をきっかけに帰国し、早稲田大学国際教養学部に入学。「地球を一つの学校にする」をミッションに掲げるWORLD ROADを設立し、世界中の人々がお互いから学び合える教育事業を推進。2022年には自身の夢である「世界の境界線を溶かす」を実現するために、HI合同会社を設立。SDGs x 教育を軸に、国内外の企業や、個人に対して、一人ひとりが自分の軸を通じて輝ける、持続可能な社会のあり方やビジネスモデルを追求する。共同著書『WE HAVE A DREAM 201カ国202人の夢xSDGs』。Forbes JAPAN「今年の顔100人」に選出。朝日新聞、サンデーモーニング コメンテーター。

REFERENCE

  1. Global Gender Gap Report 2021 https://www.weforum.org/reports/global-gender-gap-report-2021 2022年3月にアクセス.