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高齢者住宅における「骨の健康チェック」とアンケート調査からみる骨粗鬆症診療の現状と課題

医学・薬学専門出版のライフサイエンス出版が発刊する医療情報者向けの情報誌「OPJリエゾン」(2022年夏号)にアムジェン株式会社が出稿した記事広告を一般読者向けに分かりやすく一部改編して掲載しています。

  • 骨粗鬆症の社会的背景

日本の骨粗鬆症の有病者数は1,280万人と推計されており、将来的に増加すると推測されています1,2。骨粗鬆症に伴う骨折も60~70歳代にかけて急激に増加し、特に女性の大腿骨近位部(脚の付け根部分)の骨折は1987年の3万9,700件から2017年には14万9,300件にまで増加したことが報告されています3,4。骨折は、介護が必要となった要因の第3位であり5、また、日常生活動作(ADL)・生活の質(QOL)の低下、死亡リスクの増大につながることが指摘されています1。さらには、ひとたび骨折を起こすと新たな骨折が発生しやすくなるため、初発骨折(最初に骨折を起こすこと)の予防が重要視されます1。しかしながら現在、健康増進法に基づく各地方自治体での骨粗鬆症検診の実施率は60%程度6であり、受診率については、骨量の著しい減少が懸念される閉経後女性の年代であっても、全国平均でわずか約5%に止まるのが現状です7

伊奈病院
副院長/整形外科科長
石橋 英明 先生

高齢化の進展に伴い、脊椎椎体骨折や大腿骨近位部骨折が増加し、骨折に伴う患者さんの苦痛、ご家族の苦労、医療費、介護費用が急増することになります。今後はこれまで以上に骨粗鬆症性骨折の低減が求められます。

  • 高齢者に向けた骨粗鬆症早期発見のための新たな取り組み

骨粗鬆症を取り巻く課題の解決をめざし、アムジェン株式会社は、ケアプロ株式会社、株式会社フージャースケアデザインとの共催、公益財団法人骨粗鬆症財団とロコモ チャレンジ!推進協議会の後援で、首都圏の2ヵ所のシニア向け分譲マンションの入居者を対象に無料の「骨の健康チェック」を実施し、骨粗鬆症に関するアンケート調査、定量的超音波(QUS)法*を用いた骨強度測定、FRAX®**による骨折リスク評価を行いました。

*QUS法: かかとの骨を通過する超音波の速度をもとに、骨量と骨構造とを間接的に評価する方法です。放射線を使用せず持ち運びが可能な機器のため様々なシーンでの測定が可能で、スクリーニングとして用いられます。
**FRAX®: 世界保健機構(WHO)が開発した、骨折リスク評価法ツールです。今後10年間の骨粗鬆粗油による骨折を引き起こす確率を算出します。

本活動の目的は、高齢者住宅の入居者および常駐看護師の骨粗鬆症に対する知識向上、受診が必要な患者さんが適切なタイミングで診療、検査を受けられる環境づくりにあります。高齢者住宅に常駐する看護師の方々と地域の整形外科との連携を構築し、骨の健康に不安のある高齢者が、いつでも常駐看護師に相談し、整形外科を受診できる環境づくりをめざしています。

株式会社フージャースケアデザイン
ケアデザイン本部長
小林 広征 氏

高齢者住宅内では日中、健康相談室にて看護師がご入居者様の健康サポートを行っています。健康寿命を延ばしていく一環として、各種の体操を取り入れた運動プログラムや、疾患啓発のイベントを行っています。

ケアプロ株式会社
代表取締役社長 川添 高志 氏

参加者のお住まいでイベントを実施することで、近隣の医療機関を紹介しやすく、常駐の看護師による継続的な支援により受診やその後の生活のサポートも可能です。従来のアプローチでは実現が難しかったイベント後の継続的な支援が、今回のパートナーシップを通じて可能となりました。

  • 「骨の健康チェック」から見えてきた課題

「骨の健康チェック」は、首都圏の2ヵ所のシニア向け分譲マンションの入居者を対象に実施されました。173名(男性60名、女性113名)の高齢者を対象にQUS法を用いた骨強度測定、FRAX®による⾻折リスク評価を実施しました。なお、今回の2ヵ所のシニア向け分譲マンションの入居条件の年齢規定は1ヵ所では満50歳以上、もう1ヵ所では満40歳以上で、自分で身の回りのことができ、共同生活が可能といった条件は共通していました。

  • 疾患認知

「骨粗鬆症」について、半分以上の参加者が「どのような病気か知っている」と回答しましたが、「治療が必要な病気である」と回答した参加者は40%(70名)(図1)でした。

また、41%(70名)が「(自分が)骨粗鬆症になるとあまり思わない・思わない」と回答しましたが(図2)、骨粗鬆症に関連する症状に「該当なし」と回答した参加者は20%(35名)に止まり、その他、49%(85名)で「背が縮んだ」、31%(53名)で「背中が丸くなってきた」、30%(52名)で「腰が痛い」といった症状を有していました(図3)。

検査に関しては、32%(56名)が骨量測定を受けたことがなく(図4)、その理由として「検査を受けに行くきっかけがない」(39名)が最も多くあげられました(図5)。さらに、今回の参加者の12%(21名)が骨粗鬆症と診断されており、このうち15名が現在も服薬などの治療を行っています。

  • 骨密度・骨折リスクと参加者の声
  • ~QUS測定結果・FRAX®リスク評価結果より~

QUS測定結果では42%(72名)(図6)、FRAX®による骨折リスク評価では54%(93名)(図7)が「受診をお勧めします」に該当し、両検査において「受診をお勧めします」に該当する参加者が最も多くを占めました。

また、QUS法による測定結果がYAM(若年成人平均値)の69%以下に該当した42%(72名)の参加者に、後日、通院状況を確認したところ、25%が通院中、26%が新たに医療機関を受診した(近日中に受診する)と回答しました。受診した参加者からは「週1回リハビリで通院しているので、今後も何かあったらまた先生に相談したいと思います(70代男性)」、「FRAX®による10年間の主要骨粗鬆症性骨折の発生確率が約30%とあまりにも高く、驚いて受診しました(80代女性)」などのコメントがありました。一方で、受診しなかった参加者からは「日常生活の中で困っていないし自覚症状がないので、しばらくは病院に行きません(70代女性)」などのほか、「年齢的なものと考えている」、「他の病気もあり、これ以上通院したくない」といったコメントもありました。

  • YAMに対する割合では69%以下、FRAX®では15%以上の場合
  • 「骨の健康チェック」の結果が示す課題とは

本調査では、受診が必要と評価された高齢者が全体の半数程度を占めましたが、全体の半数以上が骨粗鬆症治療の必要性を認知しておらず、治療が必要であるのに治療を受けていない高齢者や、受診意向がない高齢者もいました。また、自分が骨粗鬆症になると考えていない参加者が約4割を占める一方で、約7割の参加者は骨粗鬆症に関連する何らかの症状を有しており、疾患認知が十分ではないと考えられました。

検査・診断に関しては、骨密度測定の経験がない高齢者はおよそ3割、骨粗鬆症と診断された割合が一般住民と比較して12%と低く1、適切な検査・診断がなされていないことが推察されました。また、FRAX®による10年間の主要骨粗鬆症性骨折の発生確率が15%以上となった参加者の半数超が既存骨折を有していました。また、「背が縮んだ」ことを自覚する参加者も半数程度存在し、新たな椎体骨折(背骨の骨折)リスクとの関連が示唆されました。椎体骨折の約2/3は疼痛などの自覚症状を伴わない骨折であり1、早期の検査による診断が重要と考えられます。

なお、75歳以上では高齢であること自体が骨折リスク予測に影響するため、通常、FRAX®の適用外です1。本調査を実施した全173名中110名が75歳以上であったことから、FRAX®によらず、骨折リスクが高いことを考慮すべきといえます。

  • 骨粗鬆症の早期発見、治療につなげるために

骨粗鬆症による骨折はADL・QOLを低下させ、死亡リスクを増大させます1。将来の骨折リスクを評価することは、臨床医や患者にとって生活スタイルや治療法を考慮するために重要であり、検診はその手段のひとつといえます8。検診率が高い地域では要介護率が有意に低い7ことが示されていることから、検診受診率の向上や、適切な二次骨折予防対策により、介護負担の軽減につながることが期待できます。FRAX®による骨折リスク評価に加えて椎体骨折の有無を評価することで、簡便に高い精度で骨折リスクを予測できることが報告されており8、これらの評価方法の活用は、骨粗鬆症による骨折の予防に有用と考えられます。

今回のイベントを通して高齢者が今の骨の状態と将来の骨折リスクを知り、生活改善、予防、早期診断、適切な治療につなげられる機会になることを期待しています。

REFERENCES

  1. 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会(編). 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版. ライフサイエンス出版. 2015
  2. Kanis JA, et al. J Bone Miner Metab 2012; 30(6): 700-5.
  3. Takusari E, et al. JBMR Plus 2020; 5(2): e10428.
  4. Orimo H, et al. Osteoporos Int 2016; 27(5): 1777-84.
  5. 厚生労働省. 2019 年国民生活基礎調査.
  6. 厚生労働省. 令和2年度地域保健・健康増進事業報告の概況. 健康増進編.
  7. 山内広世ほか. 日本骨粗鬆症学会雑誌 2018; 4(4): 513-22.
  8. Fujiwara S, et al. Bone 2011; 49(3): 520-5.
  9. 日本骨粗鬆症学会. リエゾンサービス. http://www.josteo.com/ja/liaison/index.html[2022年3月24日閲覧]
  10. FLS クリニカルスタンダード 作成ワーキンググループ(編). 日本版 二次骨折予防のための骨折リエゾンサービス(FLS)クリニカルスタンダード.
    http://www.josteo.com/ja/news/doc/200518_3.pdf[2022年3月24日閲覧]