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エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)の『高まる二次予防の重要性:アジアにおける心血管疾患医療の現状・課題』がこのほど公表されました。アムジェンの協賛を受けて制作された本報告書は『The Cost of Silence: Cardiovascular Disease in Asia 』(2018)に続くシリーズ第2弾です。アジアの専門家15名に詳細な聞き取り調査を実施し、心血管疾患(cardiovascular disease = CVD)の二次予防に関するスコアカードを作成。CVDの二次予防がアジア太平洋地域内8カ国(日本・オーストラリア・中国・香港・シンガポール・韓国・台湾・タイ)の医療体制にもたらす負担と、政策的対応について分析評価を行いました。今回は、10回シリーズの第2回目として、「心血管疾患がアジア太平洋地域にもたらす課題(1)アジアにおける現状」をご紹介します。
アジアにおけるCVD治療の現状
CVDが大きな医療負担をもたらすことは周知の事実です。世界のCVD患者数は、2017年時点で4億8300万人(全人口の約6.4%)に上り、世界の死亡者数の32%(1770万人)を占めるに至っています1。
今回調査対象となったアジアの8つの国と地域において、CVDがもたらす負担の大きさは様々です。例えばCVDの全死亡者に占める割合は、韓国・タイで22%程度にとどまる一方、中国では42%に達しています2。ただし二大死亡要因の1つである点は、全ての対象国に共通しています。
近年、調査対象国では一次予防への取り組みが進んでいます。特に、最も死亡率の高いCVDである虚血性心疾患(特に心筋梗塞[いわゆる心臓発作])・脳卒中(特に脳血管の閉塞・狭窄により起こる虚血性脳卒中)では顕著な成果が見られています。
例えばオーストラリアでは、1990〜2017年にかけて虚血性心疾患の年齢調整罹患率が大幅に減少しました(シンガポールでは大幅に増加)。減少のペース・幅は限定的ではあるものの、他の対象国でも改善の傾向が見られます。
一方脳卒中では、韓国・シンガポールが年齢調整罹患率を大きく減らし、中国を除いた他の対象国でも緩やかな減少が続いています。
こうした傾向は、改善可能なリスク因子とCVDの関係の強さを物語っています。CVDには様々なリスク因子が関わりますが、高血圧・高コレステロール血症・喫煙・糖尿病・肥満はとりわけ関連性が高くなっています3。例えば、タバコ対策は公衆衛生の分野で最も大きな成功を収めています。1990〜2015年にかけ、全調査対象国で喫煙率の減少が見られ、CVD発症リスクの軽減に一役買っています4。
その一方、日本・韓国を除く全ての対象国では同時期に肥満率が悪化しています5。リスク因子の構成は国によって異なりますが、日本で行われたある研究は全体像を理解する上で手がかりとなります。日本では心疾患による死亡者数が1980年以降減少していますが、同研究では様々な因子の影響度を数値化しています。その結果によると、改善の3割以上は、高血圧と禁煙対策に起因するものでした。高コレステロール血症、肥満、2型糖尿病は、この改善を25%引き下げていました6。
人口の高齢化がプラスの影響を相殺
年齢は、介入不可能なリスク因子として最も重要です。対象国の粗データを検証すると、前述のリスク因子の減少がもたらすプラスの影響は人口の高齢化によって相殺される傾向が見られます。シンガポール国立心臓センターのシニア・コンサルタントとシンガポール国立大学医学大学院 教授を務めるCarolyn Lam氏によると、同国が現在直面する状況は他の対象国にもあてはまる部分が多いと言います。「シンガポールでは、非常に速いスピードで高齢化が進んでおり、疫学的環境も急速に変化しつつあります」。高齢化には様々な評価手法がありますが、最も一般的なアプローチは65歳以上が人口全体に占める割合の変化を予測することです。国連人口部のデータによると、今回の対象国のうち5カ国(シンガポール・韓国・香港・台湾・タイ)は、2020〜2030年にかけて最も急速に高齢化が進む7カ国に入ります。また日本はすでに世界で最も高齢化が進んだ社会となっており、この傾向は、今後も世界平均を上回るペースで進展する見込みです。
中国・オーストラリアでも、人口全体に占める高齢者(65歳以上)の割合が平均値を上回っており、今後10年間世界平均を超えるペースで拡大する可能性が高くなっています7。一方、長寿大国である日本では虚血性の心疾患・脳卒中が過去にないペースで増加しており、専門家は「心不全パンデミック」発生の可能性に警鐘を鳴らしています7。また過去20年間、CVDの患者数が比較的少なかった中国でも、罹患率が急速に増加しつつあります8。
しかし医療アウトカムという基準で現状を分析すると、やや異なった状況が見えてきます。例えば虚血性心疾患・脳卒中の年齢調整死亡率は、罹患率と比較して大きく減少しています。これはアジア全体で見られる傾向です(虚血性心疾患に関する中国の例を除く)。ただし粗データを利用した分析結果では、大きなこうした改善傾向があまり見られない点には留意する必要があります。
REFERENCE
エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)の『高まる二次予防の重要性:アジアにおける心血管疾患医療の現状・課題』の全編はこちらからご覧ください。